兵庫県豊岡市にあるにぎわい創出拠点「とゞ兵」で初めて開催されたStartupWeekend豊岡(スタートアップウィークエンドとよおか)の開催レポートです。

概要

開催エリアのご紹介

豊岡市の伝統産業であるカバン産業を支えるカバンストリートに登場した築90年以上の旧料亭をリノベーションしたにぎわい創出拠点「とゞ兵」とは

とど兵外観
とゞ兵外観

とゞ兵とは、兵庫県豊岡市のカバン産業を支える「カバンストリート」に位置する、築90年以上の歴史的な建物をリノベーションした複合施設です。

豊岡市は、1000年以上続く「柳行李」という編み籠作りから始まり、現在では布製の鞄や革のバッグなど、多彩なかばん製品を生産する日本の四大産地の一つとして知られています。

JR豊岡駅から徒歩約10分の場所にあるカバンストリートは、もともと街道沿いの商店街「宵田(よいだ)」として栄えていました。2005年にカバン産業と商店街の振興を兼ねて、かばんのプロフェッショナルが集まる「カバンストリート」として再生され、約30軒の店舗のうち半分がかばん関連の店舗となっています。

カバンストリートの南端にある宵田橋の一角には、老舗料亭から文化の発信拠点へと生まれ変わった「とゞ兵」が位置しています。廃業した高級料亭を複合施設として再生し、音楽やアート、イベントなど多彩な文化の発信拠点として、地域のにぎわいを創出しています。施設内には、イベントスペース、レンタルスペース、カフェ、ギャラリー、コワーキングスペースなどがあり、新しい豊岡の文化の発信拠点として、人々が集い、交流する場所を提供しています。

Day1:交流会・チームビルド

StartupWeekend(SW)はオーガナイザーが笑顔で迎える交流会から始まります。

緊張とワクワクが交差する参加者を迎えるのは、SW参加経験があるオーガナイザーたち。元気な挨拶と共に少しでも皆さんの緊張をほぐすために積極的に話しかけていきます。

StartupWeekend豊岡交流会の様子
交流会からスタート!

参加者同士も多くの人たちが初対面。2-3名の知り合いで申し込んだ人もいるけど、一人でえいや!って参加した方々もたくさんいました。

年齢層も様々で、高校生から50代を超える方まで、学生さんから経営者まで、社会人もエンジニアからアーティストまで、地元豊岡市民の方もいれば、東京、香川、鳥取、大阪、京都など遠方から参加された方もいました。とにかく多様なバックボーンの方々に参加頂きました。

交流会では、ビールスポンサーのテンパーワンのクラフトビールも飲み放題でふるまいました。ただしこれから起業家体験のイベントが本格スタートするので、緊張をほぐす程度でストップしてもらいました。

起業家体験イベントは、2つのキーワードを組み合わせて新しいビジネスを考えるハーフベイクドワークショップから本格スタートします。今日初めて出会った参加者同士でもこのワークショップで一気に距離が縮まります。少しずつ緊張感もほぐれていきます。

そしてこのアイスブレイクの後は1日目のメインプログラム「1分間ピッチ」です。

1分間ピッチでは、自分が解決したい課題や想いをA4 1枚にどーんと書き綴って、想いを伝えます。今回は参加者全員が1分間ピッチを行いました。もちろん、自分はする気なかった・・・のにとちょっと困惑した方もいましたが、せっかくお金を払って参加したイベントです。すべてのプログラムを経験しないと勿体ない!そんなオーガナイザーからの後押しもあり、全員が挑戦しました。

1分間ピッチ
全員参加!1分間ピッチ

ちょっと強引に参加してもらった参加者の方から後から聞きましたが、「失敗しても誰も怒られない」そんな心理的安全性の環境の下で開催するのもSWの特徴。あのように後押しして頂き、日頃の自分ならば絶対に参加しないけど、頑張って1分間ピッチしてちょっと自信がつきました!って言ってくれました。

日頃できない事に挑戦できるのもSWの良さですね。

1分間ピッチのあとは、質問タイム。参加者同士のアイデアについて質問してもらえることで、自分がどうしてこの内容をピッチしたのか?の頭の整理にもなります。そして、他の方のアイデアや感想を聞くことで、自分が想像もしてなかったアイデアに膨れ上がったりします。

質問タイム
質問タイム

人と対話することで、自分の想いがより明確に可視化できるのが質問タイムの良さですね。ちなみに今回の質問タイムでは、見学に来ていたスポンサーの方やコーチ、ジャッジの方や、取材に来ていた新聞記者さんにも入ってもらいました。参加者だけでなく会場全体でSWを楽しむ!そんな時間になりました。

質問タイムの後は参加者全員で行う投票タイムです。

この投票タイムの結果でチームが形成されます。1分間ピッチで話をした面白いと思ったアイデアや、解決したいと感じた課題や、あの人と一緒にチームを組んでみたいなど、1分間ピッチで話ししたそれぞれのアイデアに対して投票していき、得票数が多かったアイデアがチームを作る権利を獲得できます。もちろん、自分が出したアイデアに投票してもOK!一人3票をもって、投票タイムです。

投票タイム
投票タイム!

投票の結果、上位6つのアイデアが選ばれ、そのアイデアを出した参加者の最終30秒プレゼンがあります。質問タイムなどを経てさらに深みが出てきたアイデアについて、さらに押しポイントの発表です。さすが投票で選ばれたアイデア!皆さん、とてもワクワクするアイデアばかりでした。

最終プレゼンを聞いた上で、いよいよ3日間を一緒に過ごすチームを形成する時間です。これをチームビルドと言います。SWのチームビルドの条件は3人以上のチームになることです。交流会からスタートして約2時間余り、様々な活動を通して仲良くなった参加者たち、どんどん積極的にコミュニケーションをしてチームビルドが行われていきます。最終的には6つのチームが完成しました。各チーム連絡先を交換して1日目が終了です。

Day2:アイデアの発掘と検証

2日目午前中は、初日で結成したチームでの活動開始です。1分間ピッチで発表したアイデアについて、役割分担を行い、ビジネスの構築を行います。SWでは大きく3つの役割に分かれて活動を行います。

– ハッカー(Hacker):アイデアをもとに、サービスを作る

– ハスラー(Hustler):作ったサービスを街に出て実際に顧客インタビューを行い、調査を行う

– デザイナー(Designer):調査を行った結果をもとにより良い使いやすい形に変えていく方向性を導き出す

このようにハッカーが作って、ハスラーが検証して、デザイナーが分析するという新規事業を構築する一連の流れをそれぞれの役割を決めて実行します。もちろん参加者は未経験者ばかり。大切なことは挑戦すること。できないのではなくやってみたい役割になってもらい挑戦してみるのです。

チームには3つの役割を担う人がきれいにいるとは限りません。役割がいない場合はどうにか知恵を出して補うしかありません。起業家は新しいものを生み出すときに完璧なチームがあることはまずありません。不完全なチームでも前に進めていかなければなりません。それが体験できるのもSWの良さです。

午前中から多くのチームが町に飛び出して自分たちのアイデアやサービスの検証作業が行われていきました。

ヒアリングの様子
ヒアリングの様子

街に飛び出して地域の方を呼び止めてアンケートを取る方、実際のサービスを創り上げる現場である「旅館」に現地調査したり、ターゲットへのインタビューを行ったり、様々なアクションを行いました。

SWで大切な言葉があります。No Talk All Actionです。これは字のごとく、話し合っていてもビジネスはできない。どんどん行動するのみであること。会場を飛び出して実際の顧客と対話し続けるのがビジネスの根っこであり、それを行うことができるのもSWの良さです。

午後からはコーチングです。地域で活躍する起業家の先輩たちが各チームの進捗情報を聞き、コーチングを行います。コーチングとはアドバイスや解決策を指示するのではなく、問いを立てることを言います。

各チームが短時間で作り上げたアイデアや検証結果を説明し、その中で生じた疑問について「それってどういうこと?」「これはしたの?」「本当にそうなの?何を調べたの?」など、コーチたちが各チームの活動について深く深く質問し続けていきます。

チームメンバーは、「あ!それは確かに調べていなかった」「考えていなかった」などどんどん課題が明確になっていきます。もちろん、コーチたちは様々な困難を自分の力で解決していっている起業家なので、解決策やアドバイスしたい気持ちが出てしまいます。でもそれをぐっとこらえて、「同じ起業家」として、どんどん質問攻めにしていきます。この体験は、参加者たちの思考の整理ができるとともに、次に何をするべきか?の解決しなければならない課題を明確にしていくことができます。

そして課題の多さ、課題を解決するための困難さに凹んでしまうチームが多く発生します。でもそれが起業、新規事業を作る難しさでもあります。この難しさを理解できることもSWの良さですね。

- 小山俊和様 にぎわい拠点「とゞ兵」館長
- 大封香代子様 手づくりパン工房こうめや 店長
秋山一平様 株式会社アンズケア 代表取締役
- 森恵美様 HostelAct&もりめ食堂 共同経営者

今回、コーチとして協力して頂いた皆様はこちらになります。

– 秋山一平様 株式会社アンズケア 代表取締役

– 大封香代子様 手づくりパン工房こうめや 店長

– 小山俊和様 にぎわい拠点「とゞ兵」館長

– 森恵美様 HostelAct&もりめ食堂 共同経営者

皆さん、但馬エリアの起業家として活躍している方ばかりです。だからこそ参加者に対してリスペクトしつつ、時には辛口な問いも立てつつコーチングしていただきました。最後には全員に対して一人ずつ講評頂きコーチングの時間は終了です。お忙しい中ご協力頂きありがとうございました。

コーチングの後は、明確になった課題についてどうするか?次の行動を決める時間です。

本当にこのアイデアを実現したいのか?起業家として判断をするタイミングです。前に進むのか?それとも他の方向に進むのか?どちらに進むにしても大きな壁が立ちはだかるのが見えてきます。

起業家として厳しい決断をするタイミングです。その時に、じゃあなぜこのアイデアに取り組みたいのか?自分自身と向き合う時間にもなります。自分自身の真にある想いとはなんだろうか?このイベントに参加したわけは何だろうか?そもそも今自分は何をしたいんだろうか?根っこにある想いと向き合う時間です。

起業家にとってとても大切なマインドを学ぶ時間でもあり、これが体験できるのもSWの良さです。根っこと向き合い、アイデアから変えるもよし、サービスを一から作り直すもよし、そのまま前に進むもよし、次の行動が決まった時に、2日目が終了となります。

Day3 最終ピッチ&審査

最終日です。最終日のゴールは15時の最終ピッチまでにサービスを作り、そのサービスを想定顧客に見て頂き本当に買ってもらえるものか?を検証し、そのサービスをどうやっていくら売れば儲かるのか?をまとめる時間です。

ピッチとは、審査員に自分たちが開発した新規事業について語り、要望を伝えることです。

要望とは一般的に資金や人材、営業先の紹介など、自分たちが次の行動に移すために足りないものを要望することです。要望するためには、自分たちの事業が魅力あるものを証明する必要があります。

起業家にとって大切なことは時間が有限であること。期日があることです。期日までに何事も終えないと次の行動に移す権利がなくなります。これも起業家が日々経験している事の一つです。その期日までに資料を整えて、各自リハーサルを行い最終ピッチに向けて準備します。

そして最終ピッチの時間です。但馬エリアを中心に起業家たちを支援者している方や投資家の皆さんが審査します。最終ピッチには6チームがエントリーしました。

1. チームふわっと:人間性の高い人材のみを紹介する求人サイト 

 チームふわっと

求職活動は虚勢と嘘だらけ、謙虚な人ほど埋もれる。良い人が埋もれる。自己分析チェックツール×市販の分析ツール×他人からの評価の3つの軸を組み合わせて、求職者を可視化できる中小企業向けの採用マッチングサイト。約100社の競合サイトからみても「人間性の高さ」をアピールはどこも実施していない。この強みを活かして採用マッチングサービスを展開する。

2. チーム旅館:廃業寸前の家族経営の旅館「夕斐軒」の再生プラン 

 チームふわっと

数年後に親が経営してきた旅館の後継ぎになるチームリーダー自身がその旅館の再生プランを考える。現状は赤字で継続性が危ない。この危機を打開するための方針は「女将に依存しない」事業に変換すること。現在の旅館経営は複数の事業が行われている。そこを「素泊まりのみ」に絞る。さらには利用者のターゲットも変革する。これから増えるであろうインバウンド需要を狙う。そしてもう一つ特徴を加える「宿泊者同士が話したいニーズ」に応えるサービスを作る。この事業転換を行う事で、スタッフの稼働を最小限にする。狙いはチームリーダー自身が「副業でも経営ができる」旅館に移行すること。この達成を目指す。

3. チームハピコン:現状の介護サービスではないスタッフを指名できる生活支援サービス 

チーム生き甲斐

現在の介護保険では適応されない「話し相手、買い物、掃除など、お出かけも一緒にできる」生活支援サービス。最大の特徴は老人側がスタッフを指名できること。独居で人付き合いが少ない寂しい高齢者たちの寂しさを解消できるサービス。兵庫県外出身で嫁いできたが、パートナーが先立たれてしまった。寂しい、もっと話したい。人に会えてうれしかった。課題は、現状の介護サービスでは取り組めない。「楽しさ」や「娯楽」もできる生活支援サービス。

4. チーム草:雑草の悩みから解決するサービス:ココヤギ 

チーム草

草刈りに悩みを持っている人向けの今までにないサービス。草刈りをしなければならないけど、すぐにできない人と草刈りをしたい人をマッチングするサービス。特徴は様々なプランがあること。プランの中には「ヤギ」を飼ってもらうこともある。さらには草刈りをしたい人の技術力を認定する「草刈りマイスター制度」を作る。草刈りレベルに合わせて依頼額を変動させる仕掛け。草刈りしたい人のモチベーションも意識したサービスを提供する。

5. チームチカン新快速:トラウマ被害から立ち直ろうという当事者に寄り添うSNSサービス 

チームチカン新快速

痴漢被害はその被害にあった時だけではない。PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し体調不良が続く。さらには人と話すことが怖くなり交友関係がつくれない。その結果被害についても他人に話しにくい状況が続く。痴漢とは被害者自身の「体を奪う」卑劣な行為である。ここから回復を目指すために大切なことは「レジリエンス」つまり立ち直る力である。この力を得るためには自助、自分だけの力だけでなく、共助の力も大切である。でもPTSDだとなかなか共助の力が使えない。その共助の力が使いやすくなるために痴漢被害者のための「クローズドSNS」を開設。このSNSでのコミュニケーションを通して、様々な共助の力が使いやすくなるための場にしていく。

6. チーム生き甲斐:親世代の生きがいづくりを伴走するサービス 

チーム生き甲斐

離れて過ごしている親を心配する子世代をターゲットにしたサービス。両親が将来「生き甲斐づくり」に苦労するかもしれない。生き甲斐を作るための活動=幸活(こうかつ)を支援するサービス。高齢者になってしまった両親が、一から生き甲斐を見つけることはきっと難しいはずである。そして生きがいづくりを子どもである自分たちが、離れているから、直接積極的にサポートしてあげることができない。そんな家族の課題を解決する「離れている親に幸活を支援するサービス」。このサービスでは、幸活を行うために様々なイベントを提供する。両親がイベントを簡単に予約できる。さらには両親が体験したイベントを子どもたち向けにレポートとして情報提供を行う。両親は幸活を行い生き甲斐作りを積極的に行い、遠隔にいる子供たちは体験レポートを通して安心する。そんな離れ離れの高齢者の親がいる家族向けのサービス。

 

3名のジャッジ(審査員)が各チームの最終ピッチを聞きつつ、不明な点を鋭い視点で指摘したり質問したりして最終ピッチが行われました。ジャッジの皆様は次の三名になります。

– 中貝宗治様 一般社団法人豊岡アートアクション 理事長

– 今井秀司様 ピースライフジャパン 代表

– 川上晃弘様 但馬信用金庫 事業支援部 部長

結果は次の通りです。一位:チーム草、二位:チームチカン新快速、三位:チーム生き甲斐でした。

結果発表のあとはジャッジからの総評です。ジャッジからはSWの評価項目、特に実際行動したのか?という視点について熱いメッセージを参加者に投げかけて頂きました。

審査発表の後は、参加者全員での懇親会です。初日の交流会では緊張もあってゆっくり味わえなかったビールスポンサーの「テンパーワン」の3種類のクラフトビールを味わいながら3日間の起業家体験の振り返りを行いました。懇親会では2日目のコーチたちも参加頂き、激励などもたくさんいただきました。また審査結果について深堀するために参加者はジャッジの皆さんにたくさん質問を投げかけていました。オーガナイザーも加わり、3日間を振り返るとても良い時間になりました。

最終日懇親会の様子
最終日懇親会の様子

最後に

初開催となったSW豊岡。多分、築100年近い歴史的な建物「とゞ兵」の大宴会場で繰り広げられるStartupWeekendは日本では初めてではないでしょうか?関係者全員を含めると40名近い方々と共に3日間走り切ったことは、多くの方の次のアクションに繋がることと信じています。ぜひ第二回StartupWeekend豊岡を開催するために引き続きオーガナイザー一同頑張りますので今後ともよろしくお願いいたします!

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