2025年10月、紅葉が美しく色づく北海道。千歳市には、全国から人が行き交う新千歳空港があり、空と陸をつなぐ玄関口として、常に賑わいを見せています。そんな千歳の街で、熱狂が生まれていました。新しい挑戦に踏み出そうとする人たちが集まり、互いに刺激を与え合う3日間。人の情熱が交差した、その現場の様子をお届けします。
イベント概要
- 日時:2025/10/17(金)・18(土)・19(日)
- 場所:北海道千歳市
- 会場:まちライブラリー@ちとせ
- イベントページ:https://swchitose202510.peatix.com/view
- 参加者人数:18名
- ファシリテーター:糸川 郁己
- コーチ:中塚 茜、田中 佑宜、福永 祐作、安藤 あかり
- ジャッジ:稲熊 良仁、西本 誠、小川陽平、田中 美帆
- リードオーガナイザー:右田 幹
- オーガナイザー:山川 広人、櫻庭 さや、品川 広樹、杉山 友樹、石田 奨太、新発田 大地
(以上、敬称略)
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《日本全国・通年スポンサー》
弥生株式会社 様、G’s 様、株式会社eiicon 様
※本文中、敬称は略させていただきました。
Day1
今回は、まちライブラリー@ちとせ の会場をお借りしました。
千歳駅の目の前にあり、札幌駅から30分、新千歳空港からはわずか2駅という、抜群のアクセスを誇る場所です。
まちライブラリーは、みんなで本を持ち寄り、本を通じて人とつながる地域の居場所として全国に広がる取り組みのひとつ。その中でも、まちライブラリー@ちとせは、千歳市が地域交流拠点として整備し、現在の形へと発展してきました。開催当日には隣のスペースで百人一首の催しも行われ、穏やかな中にもにぎやかな声が響いていました。
壁一面に並ぶ本の数々と、木の温もりを感じる開放的な空間。そこには、創造的な発想が生まれる雰囲気が漂っていました。
そんな千歳の街に、さまざまな背景を持つ参加者が集まりました。千歳出身の学生をはじめ、すでに起業している方や教員、さらに札幌からも学生や社会人が参加。世代も立場も異なる人たちが交わり、言葉を重ねるうちに、新しい挑戦の芽が生まれていく。そんな多様な出会いから、このイベントが幕を開けました。
まずは、ピザドゥ北海道 のピザを囲んでスタート。種類も豊富で、どれも北海道らしい味わい。写真からもそのバリエーションが伝わると嬉しいです。参加者の皆さんからも好評で、会場には笑顔があふれていました。
実はこのピザには、ちょっとした裏話があります。SW千歳のキックオフで千歳を訪れた3月、一部のオーガナイザーメンバーでこのお店に立ち寄りました。もちもちの生地と、北海道産の食材がたっぷり使われたピザに思わず笑みがこぼれ、その場で「開催するなら、ピザはここにしよう」と決まったのです。
あれから半年。あのときはまだ開催日しか決まっていなかったのに、こうして無事にイベントを迎えられたことを思うと、なんだか感慨深いものがあります。
美味しいピザでお腹を満たしたあとは、いよいよ3日間のアイデアをカタチにする時間。
今回は、いとやんさん(糸川 郁己さん)にファシリテーターとしてお越しいただきました。九州を中心に全国各地で活躍されており、北海道でも過去に苫小牧で2回イベントを担当された経験があります。しかもご出身は札幌。
そして面白いことに、オーガナイザーメンバーの中には出身高校が同じ方がいて、さらにその中には同級生も。思いがけないご縁が重なり合う中、あたたかな空気に包まれてStartup Weekend 千歳がスタートしました。
最初のプログラムは、ハーフベイクドからスタート。
まったく関係のない2つの言葉を組み合わせ、わずか15分でビジネスアイデアを形にし、1分間でピッチします。共通点がない組み合わせだからこそ、斬新な発想が生まれます。
今回も個性豊かなアイデアが次々と登場しました。「地元・支笏湖の水を利用してお米を作ろう」「移動距離のある北海道だからこそ、道中の温泉街で燃料をつくろう」「ジンギスカンを車内で楽しみたい!」といったユニークなテーマが生まれました。短い時間ながら、自由な発想が光るアイデアばかりでした。
そしてDay1のメインイベント、1分ピッチ。これを通じて、3日間を共に走り抜ける仲間探しが始まります。自分のアイデアを事業化するには、最低3人以上のチームを組む必要があります。つまり、ピッチした人は2人以上の仲間を集めなければならない。全員が自分のアイデアで挑戦できるわけではない――この厳しい条件こそがStartup Weekendの醍醐味のひとつです。
さらに今回は、なんとオーガナイザーメンバーも全員ピッチに挑戦!会場では、ほぼ全員によるピッチが繰り広げられました。どれも「面白そう!」「やってみたい!」「確かに必要だよね!」と感じさせてくれるものばかり。
そんな熾烈なプレゼン合戦の中から、見事に自分たちのアイデアを3日間かけて形にする権利を掴んだ方々!
ただし、権利を得たとしてもとしても油断禁物。チームを形成できなければ、自らのアイデアで週末を走り抜けることはできないのです。そしてなんと、権利を得た3人が、まさかの同じチームに!アイデアを組み合わせるのか?それとも、誰かの想いを突き進めるのか?
Startup Weekendは、チームを抜けてもいい、別のチームに入ってもいい、新しく作ってもいい。そして、市場調査のためなら千歳の外に出ることもOK。アイデアを磨くために、行動範囲に制限はない。まさに、No Talk All Action!
あっという間の1日目でした。それぞれが胸に秘めた想いとともに――どんな週末が待っているのか、想像するだけでワクワクします。
Day2
土曜日の朝がやってきました。最初のファシリテーションを終えると、各チームが一斉にアクションを開始。この日のメインイベントは、なんといってもコーチングの。起業経験を持つコーチ陣に、自分たちのアイデアを直接ぶつけ、ブラッシュアップのヒントを得る貴重な時間です。しかも今回は、チーム3つに対してコーチ4人という、まさに「使いたい放題」の贅沢な体制。
この時間をどう活かすかはチーム次第。コーチングに向けて戦略を練るチーム。建物の外に飛び出して、千歳の街で市場調査を行うチーム。それぞれが異なる方法で、アイデアを磨く一日となりました。
週末の昼は、気づけばもうお腹の方もペコペコに。この日は 晴れルモキッチン のおにぎりと豚汁をいただきました。
驚いたのは、豚汁の具材の大きさと豊富さ!ひとつひとつがしっかり大きく、やさしい味わい。冬の訪れも間もなくと感じさせるこの気候に、ぴったりの温かい食べ物でした。おにぎりとの組み合わせも最高でした。
そして、あっという間にコーチングの時間が。地元で活躍する社会人の方、北海道内各地で挑戦を続ける起業家、学生起業家など、多様なバックグラウンドを持つコーチ陣が勢ぞろいしました。
アイデアを興味深そうに聞いてくださる場面もあれば、「それって誰の、どんな課題を解決してるの?」「お金を払う人はいるの?」といった、チームの思考を一段深める鋭いフィードバックも飛び交いました。妄想の世界で終わらせず、現実の課題と価値に向きあうことの大切さを、Startup Weekendを通じて教わることができます。
なお、このイベントはすべてボランティアで運営されており、コーチの皆さんも貴重な時間を割いてご参加くださいました。お忙しい中、本当にありがとうございました!
ところで、、、
コーチングの時間にも関わらず、テーブルが空いてるチームが1つ。
実は今回、コーチングを一切受けない選択を取ったチームもありました。彼らはなんと、札幌まで足を延ばしてリサーチを実施!酒売り場で店員さんにヒアリングしたり、日本酒専門のバーでお客さんやマスターと話したり。時には「ヒアリングも兼ねて」と言い訳(?)しながら、おすすめの日本酒を味わう場面も。
そして、あっという間に夜ごはんの時間に。この日の夕食は、回転寿し旬楽 千歳店 のお寿司をいただきました。
豊富なネタの種類と、新鮮そのものの美味しさに、みんなの目が一気にキラキラと輝きます。自信を持って挑んだコーチングを経て、「方向性をどうしていくか…」と少しモヤモヤする時間帯。だからこそ、このお寿司で少しでも元気になってほしいという想いがありました。
また、この日の夜は、他チームと合同で食べることに。お互いの状況を話したり、たわいもない会話で笑い合ったり。短い時間ながら、リラックスしながら交流できる貴重なひとときになりました。
束の間の食事を終え、閉館ギリギリまで、各チームは今後の方針を詰めていました。早いもので、残された時間は、3分の1。コーチングで得た気づきと、自分たちの信念をどう融合させるのか。迷いながらも、決断をしなければピッチの時間が訪れてしまいます。会場を出てからの行動は自由。各チーム様々な動き方をします。
ちなみに、日本酒をテーマにしたチームは、千歳駅近くの日本酒バーで作業していたとのこと。昼から夜まで、ひたすら日本酒を片手に語り合い——まさに All talk, All drink。酔ったという意味では、All Drunk だったとか?(笑)(これは、レポート執筆者の実体験です。)
Day3
気づけば、もう3日目。各チームは資料の作成や、ピッチの練習を進めていきます。
MVP(Minimum Viable Product、試作品)を作るチーム。ギリギリまでユーザーを探してヒアリングを続けるチーム。どのチームも、様々な形でActionしていました。
お昼ごはんは、道の駅「サーモンパーク千歳」にある ベーカリー空とメロン のパン。
種類の違う2つのメロンパン、そして中に鮭がぎっしり詰まったシャケパン(鮭の形!)が入っていました。モチモチの生地と中にたっぷりと詰まった具材を味わいながら、ピッチに向けて、みんな黙々と作業を進めます。
そして、いよいよピッチの時間。これまでの3日間の成果を、起業経験のあるジャッジ陣に見せる瞬間がやってきました。
今回、4名の素敵なジャッジの方々をお招きしました。
千歳で事業を営む方はもちろん、起業家でありながら市議会議員としても活動されている方、そしてこの日のために千歳、さらには道外から北の地へお越しいただけた方も。このイベントのために貴重な時間を割いてくださったこと、本当にありがたい限りです。
ピッチに臨む各チームも、その期待に応えるように全力。自らの課題感から生まれたアイデアを熱く語るチーム、クイズ形式で小道具を使いながら楽しくプレゼンするチーム、さらにはピッチ中に日本酒をふるまうチームまで。ピッチのスタイルも多種多様で、見ている側もワクワクする時間でした。
それに対してのジャッジ陣のコメントや質問。「面白い」「これは伸びそう」といった前向きな声だけでなく、「なぜそのターゲットを選んだのか?」「他の市場は検討したか?」といった鋭い質問も。
無料プランと課金プランを設けたチームには、その中身や収益構造についても踏み込んだ質問が投げかけられました。真剣な眼差しでチームの挑戦を見つめるジャッジの姿が、とても印象的でした。
今回、3チームがピッチ。どのチームも素晴らしかったですが、順位をつけるのがStartup Weekendの最終ピッチ審査の掟。3位から発表されるとのことで、会場全体がハラハラドキドキの空気に包まれました。
3位は「大炎上!?やっちゃダメずかん」チームです。
SNS上での炎上をテーマにした教育型ボードゲームを提案しました。SNSにふと投稿した内容が炎上の原因のもとにならないように・・・。炎上のリスクや情報発信の影響を「体験的に学べるゲーム」として企画しました。
発表では、ボードゲームを使用して、具体例を提示することで、「どのようにプレイし、何を学べるのか」が視覚的にも伝わる構成となっていました。ピッチ資料に記載のあるアイデアの説明にとどまらず、MVPを効果的に活用し、サービスの価値を非常にわかりやすく伝えるピッチが印象的でした。
2位は「オンリーマイサケ」チームです。
テーマは日本酒。近年、若年層の日本酒離れは顕著で、度数の高さやお酒特有の苦味から敬遠されがち。また、学生時代の日本酒といえば、味わうというより「勢い」で飲んでしまい、その結果、忘れたいような苦い思い出がある方も多いのでは(笑)。
そこで彼らは、「最高の日本酒体験を届けたい」という思いから、イベントやシーンに合わせて、ユーザーの好みをヒアリングし、最適な日本酒と、それに合う食べ物を提案するサービスを企画しました。このサービスは、若年層だけでなく、他の世代、さらには海外観光客への展開も期待できるとして、審査員からも将来性の高さを評価されました。
そして、見事優勝に輝いたチームは「Re音(リオン)」。
幼少期や学生時代に音楽をしていたけれど、「また始めたい」「もう一度ステージに立ちたい」。そうは言っても、一緒に演奏できる仲間がいない。そんな1人の想いから、チームのアイデアは始まりました。一方で、バンドやオーケストラの側にも、「メンバーが足りずに活動できない」という課題があることに着目。この双方をつなぐ音楽マッチングプラットフォームを提案しました。
サービスは無料プランと有料プランを用意し、有料プランについては、なんと3日間のうちに実際の購入者を獲得。3日間の中で顧客を探す行動力とサービスのファンを見つけたという結果の両面が伴ったことが、高い評価につながりました。
どのチームも最後まで走り切った姿が本当に素晴らしかったです。お互いの健闘を称え合いながら、この経験を次の挑戦へとつなげていただきたいです。
そして、いとやんさんからの最後のメッセージ。印象的なセリフが2つありました。
1つ目は。
「真の発見の旅とは、新しい景色を探すことではない。新しい目で見ることなのだ。」
この3日間を通して、たくさんの新しい出会いや気づきがあったと思います。こうした経験を通じて視野を広げて見ることができれば、いつも見ている景色や、身近な人たちが少し違って見えるかもしれません。その小さな変化の積み重ねが、地域をより良くし、自分自身の生き方をアップデートしていくことに繋がっていくということです。
もうひとつは。
「このイベントをきっかけに、何かひとつ、普段とは異なる新しい行動をとってみよう。」
普段とは違う通勤・通学路を歩いてみる。いつもは照れくさくて言えない感謝の言葉を、お世話になってる人に伝えてみる。ほんの小さなことでも構いません。そうした一歩一歩の積み重ねが、やがて「ちりつも」になって、大きな花を咲かせるきっかけになるかもしれません。
ちなみに私は、このイベントを通して、ある日本酒の銘柄と運命的な出会いをしました。「日本酒って、こんなに美味しいんだ」と。これからは、その銘柄をもう一度味わったり、ほかにも美味しい日本酒を探す旅に出てみる。それを自分なりの「新しい行動」として3日間を締めくくろうかなと思います(笑)。
そして最後は!懇親会!
紡ぎカフェ のオードブルに、北海道を表現するビール。サッポロクラシック!さらに日本酒チームが仕入れてきた大量の日本酒で乾杯!会場は大盛り上がりでした。
参加された方からも3日間で起こった出来事、感じたことをたくさんお話しを聞くことができました。特に嬉しかったのは、参加者の方から出たこの言葉。
このイベントに出会えてよかった。なんで今まで千歳でなかったんだろう。
その声を聞いた瞬間、胸が熱くなりました。次回のオーガナイザーに名乗りを上げてくださった方もいて、本当に嬉しい限りです。
さらに、その場で12月に開催される他地域のStartup Weekendに申し込みをする方も。同じ北海道でも、地域ごとに雰囲気や文化が全く違う。そんな中で3日間を過ごすだけでも、きっと新しい発見があるはずです。そして、こうして地域を越えて人が行き来することで、参加者同士が刺激し合い、新しいつながりが生まれていく。その輪が広がり、アクションを続ける人や応援する人が北海道全体で増えていくのだなと感じています。
ぜひ、今年中に開催される2地域については、参加募集中の段階です!ぜひチェックしてみてください。
- 旭川(12/5~7):https://swasahikawa2nd.peatix.com/
- 苫小牧(12/12~14):https://swtomakomai2025.peatix.com/view
そして、もしこの熱気に共感してくださったら……ぜひ千歳での第2回開催にも一緒に関わっていただけたら幸いです。
最後まで、ご覧いただきありがとうございました!


















































































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